藤森照信氏による土壁建築。多治見市の「モザイクタイルミュージアム」を見に行ってきました


2016年6月4日、こんもりとした土の山が岐阜県多治見市の笠原地区に出現しました。 垂直に聳える土の壁、なんだかとぼけた輪郭に点々と載る松。迫力満点なのに何故か懐かしさを覚えるこの建築の名は「モザイクタイルミュージアム」。土の山なのにタイル?と思われそうですが外観はタイルの原料を掘り出す「粘土山」がモチーフ。 設計者が藤森照信氏と聞くとあ〜なるほどと思われる方が多いかもしれません。名前にピンとこなくても↓の建築は一度は目にしたことがあるかも。


長野県茅野市の里山に立つ空中茶室「高過庵」
藤森氏の生家近くに立っています。 氏いわく「支える木が3本なら(見た目的に)安定性がありすぎるから2本にした」とのこと。結構揺れるらしい((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル


藤森照信氏の建築家デビュー作は45歳の時に手がけた「神長官守矢史料館」。東北大学、東京大学大学院を経て建築史家として歩んでこられた藤森氏ですが 神長官守矢史料館で設計の楽しさに目覚めて以降、あっと驚く作品を次々と世に送り出しています。 故・赤瀬川原平さんや南伸坊さんらと結成した建築お手伝い集団の名前が「縄文建築団」と聞くとほかの建築がどんなものか大体想像がつくかと。 さらに凄いのは天衣無縫なだけではないトコロ。自然素材を巧みに使った作品群は世界的にも評価が高く熊本の学生寮では日本建築学会賞という日本で最も権威ある建築賞を受賞しておられます。


前作は滋賀県に2015年にオープンした「ラ コリーナ近江八幡 草屋根」。バームクーヘンで有名なクラブハリエの本店です。 休日には観光バスが大挙して押し寄せレジ列が1時間になるほどの大人気店になっています。


さてモザイクタイルミュージアムです。私が訪問したのはオープン翌週の週末。 混雑しているかも…との予想に反して開館10分前には誰もおらずまさかの1番乗りでした。 めっちゃいい天気!


くねくねの道を降りていった先には


カワイイ玄関がありました。出入り口、エントランスとかではなく玄関と呼びたい感が満載です。 庇、扉の曲線と配置のバランスが絶妙。敷石を侵食する草にファンタジー感が漂っていてココだけ切り取ると遺跡のようです。 そして、土の壁をよく見てみると何かが点々と埋めこまれています。


これは…


タイルや茶碗のかけらでした。周辺は全国有数の陶業地。旧・笠原町はかつて「茶碗の町」として知られていました。 ちなみにこのミュージアム、旧・笠原町庁舎の跡地に立っています。


中には子どもが使っていたであろうキャラクターものの茶碗もあります。一つずつ見るのも楽しい。

お次はモザイクタイルミュージアムに取り入れられた藤森建築お馴染みの手法をいくつか見ていきましょう。


土壁、土壁と言っていますが「藁を混ぜた色付きモルタルに土を薄く塗った壁」がおそらく正しいです。 これだけの存在感なのに威圧的ではなくむしろあたたかみを感じます。


玄関上の庇の手もみ銅板。素敵なランプシェードは多分お手製。 庇はこの建物の輪郭を形どっていますね。 穴が開いている意味は後で判明しました。


木製の吐水口


地面を覆う短い笹。上端には松が植わり屋根材は定番の鉄平石…と思いきやこれはタイルですかね。 普通「モザイクタイルミュージアム」で設計依頼が来たらタイルを外観上の主役にもってきそうですが、脇役に据えた点が面白いです。


さて、カワイイ玄関を抜けて内部に潜入です。※この次の扉が自動ドアだったのが少し残念。

このモザイクタイルミュージアムがもうひとつ素晴らしいのは内部の撮影が許可されていること。WebへもアップOKなんて太っ腹〜。

さてここまで見て「現地に行こう!」と決意された方。内部の紹介前にここでページを閉じましょう。 私の人生最高の空間体験は瀬戸内の豊島美術館なのですが事前に知識を仕入れて訪問していたら驚きが半分以下になっていたろうと思います。 生の感動はぜひ現地で。


入ったロビーは思いのほか「普通」という印象。 漆喰のストライプは藤森さんのご自宅(タンポポハウス)とかでも使われてたと思います。 受付ではまず最上階に行くよう促されます。あかるいロビーから扉をくぐると


その先は一気に地下空間!登り窯をモチーフにしているそうです。ゴツゴツした質感の壁、天井を味わいながら光に導かれるように上を目指します。


途中には藤森さんが尊敬される陶芸家、伊藤慶二氏の作品がぽっと置いてあります。光はさっきの屋根の写真にあった煙突からとっている自然光だと思います。


うねる天井。4階までの階段をのぼりきり、扉をひくと


真っ白な世界!いや、真っ白ではないのですがトンネルを抜けたらすべてが眩しく見えるあの感覚です。 瞬間「うおっ」と声が漏れてしまいました。部屋全体が白いモザイクタイルに覆われています。

なるほど、最初のくねくね道はいわば土中深くへのアプローチ。掘り出された土が登り窯で焼成されてタイルが生み出される。 そういったコンセプトをもった動線だったのでしょうか。とりあえず気持ちがよいです。


この気持ちよさは「気持ち」だけでなく体感として外の風を感じて気持ちがいいのです。 天井の一部が円形に切り取られていて空と繋がっていました。さっきの庇の穴はコレ。 また、壁に取り付けられていた吐水口は雨水排水のためだったんですね。 ちなみにこのカーテン。


色とりどりのモザイクタイルをワイヤーでつなぎあわせたものです。太陽に反射してキラキラと綺麗でした。 ちなみにモザイクタイルとは表面積が50平方cm以下のタイルのことを指すそうです。


展示室にはモザイクタイルを用いた画やオブジェなどが飾られ、そのどれもが興味深かったのですが特にそそられたのが 洗面台や浴槽など日用的に使用されていたもの。主に個人宅から採集しているというのがまたタマランです。


いい青色です。 これは近くの瑞浪市の美容院で使われていた流し台で昭和35年頃の製造だそうです。 20年ほど前に旧・笠原町の有志が全国をめぐってタイル製品の収集を開始。 その努力のかいあって、いまこうやって愛でることができます。 こんな美しい流し台も本来は誰にも知られず失われていくモノだったのでしょう。


渋い。 タイルの趣味から持ち主の人となりに思いをはせます。


昭和35年頃の浴槽です。腰掛けたいです。笠原町の個人宅からの採集です。


用は足せません。※これは贅沢品


ひとつ下がって3階はモザイクタイルの製造工程と歴史の展示室。 タイルの変遷や道具を見ることができます。


2階は最新のタイル事情がわかる産業振興のフロアです。 様々な幾何学的なパターンに目を奪われます。サンプルに実際触れるのもイイですね。 コンシェルジュカウンターも設けられていてその道のプロの方が相談に乗って下さいます。


1階に戻ってきました。 ミュージアムショップではモザイクタイルを使った雑貨や作品がたくさん売っています。 シールで貼れるモザイクタイルもあったような気が。何か買っときゃよかった。。。 1階にはほかに体験工房、モザイクカーの展示があります。


ちなみにこの日は日射しが痛いくらいの酷暑。前面広場にあったタイル貼りの水飲み場で喉を潤して帰路につきました。


このミュージアムに訪れるまでは「タイル=ちょっと古い」という図式が成立していたのですが、全然そんなことないですね。 むしろ新しい。内装のちょっとしたワンポイントに使うとか再び脚光を浴びる日がくるんではないでしょうか。 名古屋でのタカラヅカ雪組公演「ローマの休日」観劇(←実はこっちが主目的)とあわせて充実した1泊2日旅でした。 いいもの見れました。

モザイクタイルミュージアム

開館時間:9時〜17時(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(休日の場合は翌平日)、年末年始
観覧料:[個人]常設300円、年間パスポート1,000円
[団体(20名以上)]常設250円、高校生以下は無料

アクセス
[公共交通機関]
名古屋駅からJR中央本線下り、多治見・中津川方面行き、多治見駅下車。 多治見駅から東鉄バス(約20分の乗車)、東草口行き、曽木中切・羽根行きにて、 モザイクタイルミュージアム下車。
[自動車]
多治見ICから約25分。 土岐南多治見ICから約15分。 ※駐車場は笠原中央公民館などの合同駐車場です。 駐車スペースには限りがありますので公共交通機関のご利用をおすすめします。

所在地:岐阜県多治見市笠原町2082-5
公式サイトモザイクタイルミュージアム